まず危機感を持つこと、そして誰かと話すこと - 石徹白 未亜 -
私自身がネットにどっぷりはまっており、このままではまずいと試行錯誤でネット利用を減らしていった軌跡を書籍『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)としてまとめた。
ネット依存の治療外来などもあるが、おそらく、「朝起きてまずスマホチェック、夜はスマホを見ながら寝落ち」というレベルの人でも、自分が病院に行くほどではないと思っている人がほとんどだろう。少し前の調査になるが、インターネットメディア総合研究所が出している『インターネット白書2012』のアンケートでは、パソコンでネットをしている人のうち、16.1%もの人が1日に5時間以上もネットを見ているとあった。また、私は自分がネット依存だという自覚がはっきりあったが、angels-eyes遠藤さん主催のミーティングでは「ネット依存という言い方はレッテルを貼られているようで腹が立つ」という声があった。しかし、これも使いすぎているという心当たりがあるから腹が立つとも思うのだ。
嫌いな人のSNSを律儀にチェックしてしまう、荒れているとわかっている掲示板やサイトをチェックしてしまう、「今年も荒れる成人式」など、扇情的なタイトルのいわゆる「釣られ記事」をまんまとクリックしてしまう、ニュースサイトについて書かれたやたら上から目線の一般人のコメントを見てイライラする、そしてこんなことをしている間に数時間経ってしまう・・・上記に私はすべて心当たりがあるし、本にも書いて同意を得られた「ネットあるある」なことでもある。しかしこれらはすべて、少し病的な状態だと思う。やめたいと思ってもすぐにはやめられないし、見た後で何やってるんだろうとむなしくなってしまい、残るものがない。そういう意味で、アルコールやパチンコ中毒などよりも、ネット中毒はよっぽど母数の多い中毒だと思う。
ネットの教習場のようなものを作りたいと遠藤さんが話されていて、本当にインターネットは車のような存在だと思う。電車が発達している地域に住む人は車がなくても困らないけれど、一方でトラック運転手など仕事に欠かせない手段になっている人もいる。本来、車はどこかにいくために乗るものだけれど、ドライブのように乗ること自体が趣味になる人がいることもネットに似ている。また、取り返しのつかない大事故が起きる可能性があるということも。
車の教習場でも更新時期に安全運転のための動画を見せられ、正しい運転方法や、事故の理由、事故を起こしてしまった人の後悔を、定期的に知ることができる。あのネット版があればいいと思う。ただ、それは将来的な話として、今すぐにできて、効くネット依存対策は誰かとネット利用について話すことだ。私も本を書くにあたりさまざまな人とネット利用について話したが、同じようなことでイライラしていたり、逆に自分のはまっているポイントに相手がまったくはまっていなかったりなど自分を見直すいいきっかけになった。上から頭ごなしに否定してくるような人は避け、一緒になんとかしたいね、とやわらかく話をすることがまずは大切だ。私も多くの人の話を聞きたいし話をしたい。
不定期連載コラム
- 第7回 ネット依存の子どもたちへのアプローチ〜動機づけ面接の活用〜 青木 治/帯広少年院長 法務教官
- 第6回 ネットの長時間利用が子どもたちに与える影響 阿部 圭一/静岡大学名誉教授
- 第5回 大丈夫?ネット社会の子どもたち 成田 弘子/元白梅学園大学特任教授・NPO子どもとメディア公式インストラクター
- 第4回 情報爆発時代のネット依存 渡邉 純子/株式会社コドモット代表取締役社長
- 第3回 ネット依存の背景にあるもの 石川 結貴/ジャーナリスト
- 第2回 ライブ配信サイトが生む「ネット依存」 掛札 昌邦/記者
- 第1回 まず危機感を持つこと、そして誰かと話すこと 石徹白 未亜/ライター
特集
- Vol.5 子どものネット利用について 全国学力・学習状況調査報告書
(文部科学省 国立教育政策研究所平成25年12月)から 【Part3】 2014/1/22 - Vol.5 子どものネット利用について 全国学力・学習状況調査報告書
(文部科学省 国立教育政策研究所平成25年12月)から 【Part2】 2013/12/30 - Vol.5 子どものネット利用について 全国学力・学習状況調査報告書
(文部科学省 国立教育政策研究所平成25年12月)から 【Part1】 2013/12/27 - Vol.4 ケイタイ・スマホチェックリストと解説(学生編)2012/12/18
- Vol.3 子どもたちも疲れている・・・?! SNS疲れ 2012/5/19
- Vol.2 韓国のInternet依存症事情 2012/4/20
- Vol.1 ケイタイ依存の意識って人によって違う?? 2012/2/24